kintone(キントーン)は、業務改善プラットフォームとして多くの企業で導入されていますが、その中でも特に強力な機能の一つが「プロセス管理」機能、すなわちkintoneワークフローです。紙や口頭での申請・承認業務に課題を感じている企業にとって、kintoneワークフローは業務効率化の切り札となり得ます。
この記事では、kintoneワークフローの基本から導入のメリット、承認フローの作り方、設定方法、活用事例、さらにはプラグインや連携によるカスタマイズ、運用上の注意点まで、具体的な方法を交えながら網羅的に解説します。申請業務の漏れ防止や改善のヒントが満載ですので、ぜひ最後までご覧ください。
kintoneワークフローの基本と導入のメリット
まず、kintoneワークフローとは何か、その基本と導入によって得られるメリットについて見ていきましょう。
kintoneワークフローとは?概要と特徴を解説
kintoneワークフローとは、kintoneの標準機能である「プロセス管理」機能を利用して、申請から承認・決裁に至る一連の業務フローをシステム上で実現する仕組みです。cybozu.com の提供するkintone上で、特別なプログラミング知識がなくても、マウス操作でフローを作成できるのが大きな特徴です。
kintoneのアプリ(データベース)に登録されたレコード(データ)ごとにステータス(状態)を持たせ、誰が・いつ・何を処理するのかを定義します。例えば、「申請中」「部長承認待ち」「完了」「差し戻し」といったステータスを設定し、それぞれのステータスで作業者(承認者や処理担当者)を指定できます。作業者は自分が対応すべきレコードを簡単に把握でき、ボタンをクリックするだけで次のプロセスに進めることができます。
キントーンワークフロー導入のメリットと効果
kintoneワークフローを導入することで、以下のようなメリットと効果が期待できます。
- ペーパーレス化の推進: 紙の申請書や稟議書が不要になり、印刷・保管・検索の手間とコストを削減できます。
- 承認スピードの向上: 申請されると承認者に通知が届き、kintone上で即座に承認・却下・差し戻しのアクションを行えるため、承認までのリードタイムが大幅に短縮されます。複数承認者がいる複雑なフローでもスムーズに進みます。
- 進捗状況の可視化: 申請データが今どのステータスにあるのか、誰のところで止まっているのかが一目でわかります。これにより、承認漏れや遅延の発生を防止できます。
- 内部統制の強化: 承認経路や承認履歴がレコードに正確に記録されるため、不正防止や監査対応に役立ちます。誰がいつ承認したかの履歴が自動で保存されます。
- 業務標準化: 申請フォーマットや承認プロセスをkintone上で統一できるため、業務の属人化を防ぎ、標準化を促進します。
プロセス管理が業務効率化にもたらす影響
適切なプロセス管理は、単に申請承認業務を楽にするだけでなく、業務全体の効率化に大きく貢献します。
- ボトルネックの特定と改善: どこで処理が滞留しやすいかをデータに基づいて把握し、プロセスの見直しや人員配置の最適化に繋げられます。
- 属人化の排除: 業務フローが明確になることで、担当者個人の経験や勘に頼ることなく、誰でも一定の品質で業務を遂行できるようになります。
- 情報共有の促進: 申請内容や承認状況が関係者にリアルタイムで共有されるため、メールや口頭での確認作業が削減されます。
- 継続的な業務改善: プロセスの実行状況をデータで分析し、より効率的なフローへと継続的に改善していく文化を醸成できます。
kintone承認フローの作り方・設計パターン
ここでは、kintoneで承認フローを実際に作成するための基本的な手順と、複数承認や複雑な経路に対応する設計パターンについて解説します。
kintoneでの承認フロー作り方の基本と手順
kintoneでの承認フロー(プロセス管理)の作成は、アプリの設定画面から行います。基本的な手順は以下の通りです。
- ステータスの定義: 申請から完了までの業務の状態を表すステータス(例:「未申請」「申請中」「部長承認待ち」「完了」「却下」「差し戻し」)を作成します。
- 作業者の設定: 各ステータスで作業(承認や処理)を行う担当者(作業者)を指定します。ユーザー個人、組織、役職、またはレコード内のフィールド(例:「申請者」フィールド)で動的に指定することも可能です。
- プロセスの設定: どのステータスからどのステータスへ移行できるか、その際に実行されるアクション(例:「承認する」「差し戻しする」)のボタン名を定義します。
- 分岐条件の設定(任意): 特定の条件(例:申請金額が〇〇円以上)によって、次のステータスや作業者を分岐させたい場合に設定します。
複数承認や承認経路の設計パターン解説
業務によっては、複数の承認者が必要だったり、承認経路が複雑になったりするケースがあります。kintoneでは、以下のようなパターンで設計できます。
- 直列承認: 担当者 → 課長 → 部長のように、順番に承認が進むフロー。各ステータスの作業者を順番に指定します。
- 並列承認(AND承認/全員承認): 複数の承認者全員の承認が必要なフロー。承認者フィールド(ユーザー選択フィールドなど)を複数設け、全員が承認したら次のステータスに進むようにアクションや条件を設定します(プラグインやカスタマイズが必要な場合あり)。標準機能では、作業者に複数ユーザーを指定し、「作業者のうち1人が処理を実行」するか「作業者全員が処理を実行」するかを選択できます。
- 並列承認(OR承認/いずれか1人): 複数の承認者のうち、誰か1人が承認すればOKなフロー。作業者に複数ユーザーを指定し、「作業者のうち1人が処理を実行」する設定を選択します。
- 段階承認: 申請内容(例:金額)に応じて承認者が変わるフロー。条件分岐を活用して設定します。
条件分岐・複雑なフローの設計方法
申請内容に応じて承認経路を分けたい、特定の条件を満たした場合のみ特別な処理を追加したい、といった複雑なフローもkintoneで実現可能です。
- フィールド値に基づく分岐: 「申請金額」フィールドの値が10万円以上なら部長承認へ、未満なら課長承認で完了、といった分岐をプロセス管理の設定で定義できます。「プロセスを進める条件」でフィールドと条件を指定します。
- 選択項目に基づく分岐: 「申請種別」フィールド(ドロップダウンなど)で選択された項目に応じて、異なる承認経路やステータスに進むように設定します。
- プラグインの活用: 標準機能の条件分岐では対応できない、より複雑な条件(例:複数フィールドの組み合わせ)が必要な場合は、条件分岐プラグインなどを活用すると実現しやすくなります。
複雑なフローを設計する際は、事前に業務フロー図を作成し、ステータス、作業者、アクション、分岐条件を明確にしておくことが重要です。

kintoneワークフローアプリの設定方法
次に、実際にkintoneでワークフローアプリを設定する具体的な画面操作や、ステータス管理の実現方法、申請書アプリの作成手順を見ていきます。
ワークフローアプリの設定方法と画面操作
ワークフロー(プロセス管理)の設定は、対象アプリの設定画面内にある「プロセス管理」メニューから行います。
- プロセス管理の有効化: まず、「プロセス管理を有効にする」にチェックを入れます。
- ステータスの追加: 「ステータス」欄で、業務に必要なステータスを追加し、名前を入力します(例:「申請中」「部長承認待ち」)。
- 作業者の設定: 各ステータスの右側にある「作業者」欄で、そのステータスで処理を行うユーザーや組織などを選択します。「レコードのフィールドを指定」を選択すれば、「申請者」や「担当部署」といったフィールドの値を作業者にすることも可能です。
- プロセスの設定: 「プロセス」欄で、ステータス間の移行ルールを設定します。現在のステータスを選択し、「変更後のステータス」と、その移行を実行するための「アクション名」(ボタン名)を入力します。
- アクション実行時の条件設定(任意): 特定の条件を満たした場合のみアクションボタンを表示させたい場合に設定します。
- 設定の保存: 全ての設定が完了したら、「アプリの設定を保存」し、「アプリを更新」をクリックします。
申請〜決裁までのステータス管理の実現方法
プロセス管理を設定すると、レコード詳細画面の上部に現在のステータスと、実行可能なアクションボタンが表示されるようになります。
- 申請者: レコードを登録し、最初のアクション(例:「申請する」)をクリックすると、ステータスが「申請中」などに変わり、次の作業者(例:課長)に処理が移ります。
- 承認者: 自分が作業者に指定されているレコードの一覧を確認できます。レコードを開き、内容を確認後、「承認する」「差し戻しする」「却下する」などのアクションボタンをクリックします。
- ステータスの自動更新: アクションが実行されると、ステータスは自動的に設定された次のステータスに更新されます。
- 進捗確認: レコード一覧画面や詳細画面で、各申請がどのステータスにあるかを常に確認できます。
このように、kintone上で申請から決裁までのステータスが明確に管理され、プロセスがスムーズに進行します。
実際の稟議書・申請書アプリ作成手順
例として、稟議書アプリでワークフローを設定する手順を簡単に示します。
- アプリの作成: まず、稟議書に必要なフィールド(申請者、申請日、件名、内容、金額、添付ファイルなど)を持つアプリを作成します。
- プロセス管理の有効化: アプリ設定から「プロセス管理」を開き、有効にします。
- ステータスの定義: 「申請前」「課長承認待ち」「部長承認待ち」「決裁済」「却下」「差し戻し」といったステータスを作成します。
- 作業者の設定:
- 「申請前」の作業者: 「作成者」
- 「課長承認待ち」の作業者: 「組織」を選択し、該当する課の組織を指定、または「役職」を指定(例:課長)。作業者は1人とは限らないため、「作業者のうち1人が処理を実行」を選択。
- 「部長承認待ち」の作業者: 同様に部長の組織や役職を指定。
- プロセスの設定:
- 「申請前」→「課長承認待ち」 (アクション名: 「申請する」)
- 「課長承認待ち」→「部長承認待ち」 (アクション名: 「課長承認」)
- 「課長承認待ち」→「差し戻し」 (アクション名: 「差し戻し」)
- 「部長承認待ち」→「決裁済」 (アクション名: 「部長承認(決裁)」)
- 「部長承認待ち」→「差し戻し」 (アクション名: 「差し戻し」)
- 「差し戻し」→「課長承認待ち」 (アクション名: 「再申請する」)
- ステータスが「課長承認待ち」「部長承認待ち」の時に却下できるよう、「却下」ステータスへのプロセスも設定 (アクション名: 「却下」)。
- 条件分岐の設定(例:金額): 金額フィールドの値に応じて部長承認をスキップするなどの分岐を「プロセスを進める条件」で設定します。
- アプリの更新: 設定を保存し、アプリを更新して完了です。
kintoneワークフロー機能の詳細と活用事例
kintoneワークフローの標準機能でできること、便利な機能、そして具体的な活用シーンについて掘り下げていきます。
標準機能とカスタマイズできる範囲
kintoneの標準機能であるプロセス管理は、多くの申請承認業務に対応できます。
- ステータス管理: 業務の進捗状況を管理。
- 作業者設定: ステータスごとに担当者を指定(ユーザー、組織、役職、フィールド値)。
- アクション設定: ステータス移行のためのボタンを設定。
- 条件分岐: フィールド値に基づきプロセスを分岐。
- 履歴管理: いつ誰が処理したかの履歴を自動保存。
一方で、より複雑な要件にはカスタマイズが必要になる場合があります。
- JavaScript/CSSカスタマイズ: 画面の見た目やボタンの挙動を細かく制御。
- プラグイン: 条件分岐の強化、承認フローの可視化、他アプリとの連携など、特定の機能を追加。
- API連携: 外部システムとのデータ連携や、より高度な自動処理の実現。
標準機能でどこまで実現できるかを確認し、必要に応じてカスタマイズを検討しましょう。
通知・アクション・ボタンなどの便利機能
kintoneワークフローを円滑に運用するためには、以下の機能が役立ちます。
- 通知機能:
- プロセス管理の通知: 自分が作業者に指定された際にkintone上で通知を受け取れます。「アプリの設定」>「設定」タブ>「プロセス管理」で設定します。
- レコードの条件通知: 特定のステータスになった時や、期日が近づいた時などに、指定したユーザーに通知を送る設定も可能です。「アプリの設定」>「設定タブ」>「通知」で設定します。メール通知も可能です。
- アクション実行時のフィールド更新: 承認ボタンをクリックした際に、承認日フィールドに当日の日付を自動入力する、といった設定が可能です(プラグインやカスタマイズが必要な場合あり)。
- アクションボタンの表示制御: 作業者以外にはアクションボタンを表示しない、特定の条件を満たした場合のみボタンを表示する、といった制御が標準機能やカスタマイズで可能です。
- コメント機能: レコードごとにコメントを記載できるため、差し戻し理由の伝達や承認者への補足説明などに活用できます。
これらの機能を組み合わせることで、処理の漏れを防ぎ、コミュニケーションを円滑に進めることができます。
プロセス管理機能の具体的な活用シーン
kintoneのプロセス管理は、社内の様々な申請・承認業務に活用できます。
- 稟議書・決裁申請: 金額による条件分岐を含む承認フロー。
- 経費精算申請: 申請者→経理担当→承認者というフロー。領収書ファイルの添付も可能。
- 交通費申請: 同上。
- 休暇申請・勤怠変更申請: 申請者→上長→人事部といったフロー。
- 備品購入申請: 申請者→管理者→発注担当というフロー。
- 見積書承認: 営業担当→上長→営業部長といったフロー。
- 契約書レビュー: 法務担当へのレビュー依頼と承認。
- 問い合わせ管理: 受付→担当者割り当て→回答→完了といったステータス管理。
- タスク管理: 未着手→作業中→レビュー待ち→完了といった進捗管理。
- 採用プロセス管理: 書類選考→一次面接→二次面接→内定→入社といったステータス管理。
これらはほんの一例です。アイデア次第で様々な業務のプロセス管理に適用できます。
kintoneワークフローの承認者・作業者管理
ワークフローを正しく機能させるためには、承認者や作業者を適切に管理することが不可欠です。
承認者指定と組織・役割連携の設定方法
kintoneでは、ステータスごとの作業者を柔軟に指定できます。
- ユーザー指定: 特定のユーザーを直接指定します。
- 組織指定: cybozu.com共通管理で設定されている組織を指定します。その組織に所属するユーザー全員が作業者候補となります(アクション設定で「1人」か「全員」かを選択)。
- 役職指定: cybozu.com共通管理で設定されている役職(例:部長、課長)を指定します。該当する役職のユーザーが作業者候補となります。
- フィールドの値: レコード内のフィールド(ユーザー選択、組織選択、役職選択)の値を作業者として指定します。これにより、申請内容に応じて動的に承認者を割り当てることができます。例えば、「申請者」フィールドを指定すれば、申請者自身が差し戻し後の作業者になれます。
- 作成者: レコードを最初に作成したユーザーを指定します。
組織や役職で指定する場合、cybozu.com共通管理で組織情報やユーザーの役職が正しく設定されていることが前提となります。人事異動があった場合は、共通管理の情報を更新すれば、kintoneアプリ側の設定を変更することなく、新しい承認者に自動的に処理が割り当てられます。
代理承認・差し戻し・却下対応の実現
ワークフロー運用では、承認者の不在や申請内容の不備といった状況への対応も必要です。
- 代理承認: 承認者が出張や休暇で不在の場合、他のユーザーが代わりに承認できる仕組みです。
- kintoneの標準機能では、アプリのアクセス権で許可されたユーザーであれば、プロセスを進める権限も持つ場合があります。
- 作業者に複数ユーザー(例:部長と副部長)を指定し、「作業者のうち1人が処理を実行」と設定すれば、どちらかが承認できます。
- より厳密な代理承認機能が必要な場合は、プラグインの導入やカスタマイズを検討します。
- 差し戻し: 申請内容に不備があった場合などに、承認者が申請者や前のステータスに処理を戻すことです。プロセス管理の設定で、「差し戻し」用のステータスとアクションを定義します。差し戻し理由をコメント欄に記載するようにルール化すると良いでしょう。
- 却下: 申請自体を認めない場合です。「却下」ステータスと、そこへ移行するための「却下」アクションを設定します。却下された申請は、通常、再申請はできずプロセスが終了します。
レコード・履歴・処理記録の管理手順
kintoneワークフローでは、誰がいつどのような処理を行ったかの履歴が自動的に記録され、管理されます。
- プロセス履歴の確認: レコード詳細画面で、現在のステータスの下や、コメント欄の隣などにプロセスの履歴(ステータスの変更履歴、作業者、処理日時)が表示されます。これにより、承認プロセスの透明性が確保されます。
- レコードの変更履歴: プロセス管理によるステータス変更だけでなく、フィールド値の変更履歴もレコードごとに確認できます(アプリの設定で「履歴」機能を有効にする必要あり)。
- 監査ログ: kintoneシステム管理者は、cybozu.com共通管理で監査ログを確認でき、レコードの閲覧、編集、削除などの操作履歴を追跡できます。
これらの履歴管理機能により、業務のトレーサビリティが向上し、内部統制の強化にも繋がります。
kintoneワークフローのプラグイン・連携活用
kintoneの標準機能だけでは要件を満たせない場合、プラグインの導入や外部システムとの連携が有効な手段となります。
無料・専用プラグインで機能を追加/改善
kintoneには、ワークフロー機能を拡張・改善するための様々なプラグインが存在します。無料で提供されているものもあれば、有償の専用プラグインもあります。
- 条件分岐プラグイン: 標準機能よりも複雑な条件(複数フィールドの組み合わせ、計算結果など)でプロセスを分岐させることができます。
- 承認フロー可視化プラグイン: 承認経路を図で表示し、現在のステータスを分かりやすくします。
- 代理承認プラグイン: より柔軟な代理承認ルールを設定できます。
- 一括承認プラグイン: 複数の申請を一覧画面でまとめて承認できます。
- 関連レコード更新プラグイン: ワークフローのステータス変更に応じて、別のアプリのレコードを自動更新するなどが可能になります。
これらのプラグインを活用することで、開発費用を抑えながら、自社の業務に合わせたワークフローを実現しやすくなります。導入前には、自社の要件に合うか、他のプラグインとの競合がないかなどを確認しましょう。
他システムやツールとの連携方法
kintoneワークフローを既存のシステムやツールと連携させることで、業務全体の自動化や効率化を図れます。
- kintone APIの活用: kintoneが提供するAPIを利用して、自社で開発したシステムや他のクラウドサービスとデータを連携させることができます。例えば、ワークフローで承認された経費データを会計システムに自動登録する、などが可能です。
- Webhook: kintoneアプリでレコードの登録や更新、ステータス変更があった際に、外部システムに自動で通知を送る機能です。これをトリガーとして外部システム側で処理を実行させることができます。
- 連携サービス(例:Zapier, IFTTT, 各種kintone連携サービス): プログラミング不要でkintoneと様々なWebサービス(チャットツール、メール、カレンダー、ストレージサービスなど)を連携できるサービスが多数あります。例えば、「承認完了したらSlackに通知する」「申請内容をGoogleスプレッドシートに転記する」といった連携が簡単に実現できます。
これらの連携により、データの二重入力の手間を省き、システム間の情報の整合性を保つことができます。
フローのカスタマイズと外部コラボ連携
プラグインやAPI連携を駆使することで、標準機能の枠を超えたワークフローのカスタマイズや、社内外とのコラボレーションが実現します。
- 複雑な承認ロジックの実装: JavaScriptカスタマイズや連携サービスを組み合わせることで、非常に複雑な承認経路や条件分岐を持つワークフローも構築可能です。
- 外部ユーザーとの連携: 取引先やパートナー企業など、社外のユーザーをワークフローの一部に組み込むことも検討できます。kintoneのゲストユーザー機能や、連携ツールを介した情報共有などが考えられます。
- 特定業務特化フロー: 特定の業務(例:契約管理、品質管理)に特化した独自のプロセス管理システムをkintone上で開発することも可能です。
カスタマイズや連携を行う際は、費用対効果やメンテナンス性も考慮して、最適な方法を選択することが重要です。

業務フローの改善と運用でのポイント
kintoneワークフローを導入した後も、継続的な改善と適切な運用が業務効率化を持続させる鍵となります。
kintone運用時の注意点と漏れ防止策
kintoneワークフローをスムーズに運用するためには、以下の点に注意しましょう。
- アクセス権の設定: アプリやレコード、フィールドに対するアクセス権を適切に設定し、関係者以外が承認プロセスを操作したり、情報を閲覧したりできないようにします。
- 通知設定の見直し: 通知が多すぎると見落としの原因になります。作業者へのプロセス管理通知や、必要な条件通知に絞り込み、適切に設定します。「自分宛通知のみ」を活用するのも有効です。
- 担当者変更への対応: 人事異動や退職があった場合、作業者の設定(特にユーザー直接指定の場合)や代理承認の設定を速やかに見直す必要があります。組織や役職での指定を活用するとメンテナンスが楽になります。
- 運用ルールの明確化: 差し戻し時のコメント入力ルール、代理承認の申請方法、長期滞留案件への対応など、運用ルールを明確にし、社内で周知徹底することが重要です。
- 定期的な棚卸し: 形骸化したワークフローがないか、承認経路は現状に即しているかなどを定期的に見直し、必要に応じてプロセスを改善します。
申請漏れや処理漏れを防ぐには、リマインダー通知の設定や、未処理案件の一覧画面を作成し、定期的にチェックする習慣をつけることが効果的です。
複雑なフロー・条件分岐への具体的な対応例
業務要件によっては、フローが複雑になったり、条件分岐が多くなったりすることがあります。そのような場合の対応例をいくつか紹介します。
- フローの分割: 一つのアプリで全てを管理しようとせず、プロセスを分割して複数のアプリで管理し、アプリ間でデータを連携させる方法も有効です(例:申請アプリと承認アプリを分ける)。
- ルールの単純化: 可能であれば、業務フロー自体を見直し、承認経路や条件分岐をシンプルにできないか検討します。
- プラグインの活用: 複雑な条件分岐や承認パターンに対応できるプラグインを導入します。
- 設定内容の可視化: プロセス管理の設定内容をドキュメント化したり、フロー図を作成したりして、管理者や関係者が設定内容を容易に理解できるようにします。
- テスト運用: 複雑なフローを設定した場合は、本格運用前に十分なテストを行い、意図した通りに動作するかを確認します。
複雑さが増すと管理コストも増大するため、可能な限りシンプルに保つことを心がけましょう。
組織内での業務改善・処理スピード向上
kintoneワークフローは、組織全体の業務改善と処理スピード向上に貢献します。
- ボトルネックの特定と解消: プロセスの履歴や滞留状況を分析し、どこで時間がかかっているのか(ボトルネック)を特定します。その原因を分析し、承認者の追加、条件分岐の見直し、並列承認の導入などで解消を図ります。
- 待ち時間の削減: 承認者へのリアルタイム通知や、スマートフォンからの承認を可能にすることで、承認待ち時間を短縮できます。
- 手戻りの削減: 申請フォームの入力項目を分かりやすくしたり、入力チェック機能を設けたりすることで、差し戻しの原因となる入力ミスを減らします。差し戻し理由の明確化も重要です。
- 定型業務の自動化: API連携やプラグインを活用し、承認後のデータ転記や通知送信などを自動化することで、処理時間をさらに短縮します。
- 成功事例の共有: ワークフロー導入によって業務が改善された事例を社内で共有し、他部署への展開を促すことで、組織全体の効率化に繋げます。
kintoneワークフローでの申請漏れ・発生防止
ワークフローを導入しても、「申請忘れ」「承認忘れ」といった漏れが発生しては意味がありません。kintoneの機能を活用して、これらの漏れを防止する方法を解説します。
通知・チェック機能による申請漏れ防止策
申請自体が漏れてしまう(未申請)ことや、処理が滞ることを防ぐための機能です。
- リマインダー通知: kintoneの「リマインダーの条件通知」機能を活用します。例えば、「申請期限日の3日前に申請者に通知する」「ステータスが〇〇のまま3日経過したら作業者に通知する」といった設定が可能です。
- 入力チェック機能: 申請フォームで必須項目の入力漏れを防いだり、入力値の形式(例:メールアドレス、金額)をチェックしたりすることで、不備による差し戻しや申請の遅延を防ぎます。
- ポータルでの告知: kintoneのポータル(トップページ)に、「〇〇の申請期限は△△です」といったお知らせを掲載し、注意喚起を行います。
- 未申請一覧の作成: 本来申請されるべきデータ(例:週報)が登録されているかをチェックするためのアプリや一覧を別途作成し、定期的に確認する運用も考えられます。
承認状況の可視化とリアルタイム通知の実現方法
承認プロセスの進捗を関係者が容易に把握できるようにすることで、処理漏れや遅延を防ぎます。
- 一覧画面でのステータス表示: レコード一覧画面で、各申請の現在のステータスや作業者を表示するように設定します。絞り込みやソート機能で、自分が対応すべき案件や、特定のステータスの案件をすぐに確認できます。
- グラフ機能の活用: ステータスごとの案件数をグラフで表示したり、承認までにかかった時間をグラフ化したりすることで、全体の状況や遅延傾向を視覚的に把握できます。
- リアルタイム通知:
- プロセス管理の通知: 作業者に指定されると自動で通知が飛びます。
- レコードの条件通知: 特定のステータスになった際(例:「承認完了」)に関係者(例:申請者)へ通知を送るように設定します。これにより、申請者は承認されたことをすぐに知ることができます。
- コメントでのメンション通知: コメント欄で「@ユーザー名」を付けて投稿すると、そのユーザーに通知が送られるため、確認依頼や催促に活用できます。
エラー・未対応への即時対応手段
プロセスが止まってしまったり、エラーが発生したりした場合に、迅速に対応するための手段です。
- 滞留案件のアラート: リマインダー通知を活用し、一定期間ステータスが変わらない案件があれば、管理者や上長にも通知が飛ぶように設定します。
- エスカレーションルール: 承認者が長期不在の場合や、対応が困難な案件が発生した場合のエスカレーション(上位者への依頼)ルールを事前に定めておきます。
- エラー発生時の連絡体制: カスタマイズや連携でエラーが発生した場合に、誰がどのように対応するかの連絡体制や手順を決めておきます。
- 管理者の定期チェック: ワークフロー管理者は、定期的に全体のプロセス状況を確認し、滞留している案件や問題が発生している案件がないかをチェックします。
これらの手段を講じることで、ワークフローの運用における漏れや遅延のリスクを最小限に抑えることができます。

kintoneワークフローのカスタマイズ・開発方法
標準機能やプラグインだけでは実現できない要件がある場合、JavaScriptやAPIを活用したカスタマイズや開発が必要になります。
標準画面・ボタンのカスタマイズ例解説
JavaScriptを活用することで、kintoneの標準画面やアクションボタンの挙動をカスタマイズできます。
- ボタンの表示/非表示制御: 標準の条件分岐よりも複雑な条件でアクションボタンの表示/非表示を切り替える。
- ボタン名の動的変更: ステータスやフィールドの値に応じてアクションボタンの文言を変更する。
- 独自ボタンの追加: 標準のアクションボタンとは別に、特定の処理(例:関連レコードの作成、外部APIの呼び出し)を行うカスタムボタンを追加する。
- 画面表示の変更: レコード詳細画面のレイアウトを調整したり、特定のフィールドを目立たせたりする。
- アクション実行前の確認ダイアログ: 承認や却下などのアクションを実行する前に、確認メッセージを表示する。
これらのカスタマイズは、kintoneのJavaScript APIを利用して実装します。開発にはJavaScriptの知識が必要です。
API等を活用した独自プロセス管理の開発手法
より高度なプロセス管理や、kintoneの標準機能とは異なるワークフローを実現したい場合は、APIを活用した開発が必要になります。
- kintone REST API: kintoneアプリのレコードデータの取得、登録、更新、削除や、プロセス管理のステータス更新などを外部システムから行うためのAPIです。これを利用して、独自のワークフローエンジンを構築したり、基幹システムと連携したプロセスを実現したりできます。
- Webhook: kintoneでのイベント(レコード登録、ステータス更新など)をトリガーに、外部のプログラムを呼び出す機能です。承認完了後に自動で請求書PDFを作成して外部ストレージに保存する、といった連携処理を実現できます。
- kintone JavaScript API: kintoneの画面上でのイベント(ボタンクリック、フィールド値変更など)をトリガーに、APIを呼び出して処理を実行することも可能です。
これらのAPIを組み合わせることで、kintoneをプラットフォームとして利用しつつ、自社独自の複雑な業務プロセスに対応するシステムを開発できます。
費用を抑えた具体的カスタマイズ手段
APIを活用した本格的な開発は費用が高くなる傾向がありますが、費用を抑えつつカスタマイズを実現する手段もあります。
- プラグインの最大限活用: まずは既存のプラグイン(無料・有償問わず)で要件を実現できないか十分に調査します。プラグインを組み合わせることで開発不要で実現できることも多いです。
- 部分的なJavaScriptカスタマイズ: 全てを開発するのではなく、標準機能やプラグインをベースとし、どうしても必要な部分だけをJavaScriptでカスタマイズします。これにより開発工数を抑えられます。
- 連携サービスの活用: ZapierなどのiPaaS(Integration Platform as a Service)を活用すれば、コーディングなしで様々なシステム連携が実現できる場合があります。月額費用はかかりますが、開発費用と比較して安価に済むケースが多いです。
- コミュニティや情報の活用: cybozu developer network (cybozu.dev) などで公開されているサンプルコードや開発情報を活用することで、開発コストを削減できる可能性があります。
- パートナー企業の選定: 開発を外注する場合は、kintoneの開発経験が豊富なパートナー企業を選定し、費用対効果の高い提案を受けることが重要です。
カスタマイズは目的ではなく手段です。費用対効果を常に意識し、必要最小限のカスタマイズで課題を解決できないか検討しましょう。
まとめ
kintoneワークフロー(プロセス管理機能)は、申請・承認業務の効率化、ペーパーレス化、内部統制強化に大きく貢献する強力なツールです。標準機能でも多くの業務に対応できますが、プラグインや連携、カスタマイズを活用することで、さらに自社の業務に最適化されたワークフローを構築することが可能です。
この記事で解説した基本的な作り方から運用のポイント、カスタマイズの手段までを参考に、ぜひkintoneワークフローを活用し、業務プロセスの改善と効率化を実現してください。
もし、kintoneワークフローの導入や設定、カスタマイズについてお困りのことがあれば、お気軽にTOMOS Cloudにご相談ください。貴社の課題解決に向けた具体的なご提案をさせていただきます。