はじめに
企業のDX推進が加速する中、業務の効率化や業務改善は喫緊の課題です。しかし、専門的なスキルを持つ人材の不足や、開発にかかる時間とコストが障壁となるケースも少なくありません。こうした悩みを解決するツールとして注目されているのが、サイボウズ株式会社が提供するクラウドサービス「kintone(キントーン)」です。
kintoneは、プログラミングの知識がなくても、現場の担当者自身が業務に必要なシステムやアプリを作成できるノーコード・ローコードツールです。本記事では、kintoneの基本から活用方法、アプリ作成の具体的な手順、連携、セキュリティ、導入方法まで、必要な情報を網羅的に解説します。kintoneの活用で、あなたの仕事をより効率的に、そして快適にするヒントをご覧ください。
kintoneとは?わかりやすく解説
kintoneの概要と特徴
kintoneは、業務に必要なアプリを誰でも簡単に作成できるクラウドサービスです。データベース機能とワークフロー機能、そしてコミュニケーション機能を兼ね備えており、散在しがちな情報を一元管理し、チーム内の情報共有や作業の効率化を実現します。
主な特徴:
- ノーコード/ローコード開発: プログラミング不要で、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でアプリを作成できます。JavascriptやAPIを活用すれば、より高度なカスタマイズも可能です。
- 柔軟なデータベース: Excelのようにデータを蓄積・管理できますが、項目(フィールド)の種類が豊富で、ファイル添付やユーザー選択、計算、ルックアップ(他アプリからのデータ取得)など、業務に合わせた柔軟な設計が可能です。
- プロセス管理: 申請・承認などのワークフローを簡単に設定でき、業務のプロセスを可視化・標準化できます。進捗状況の把握も容易になります。
- コミュニケーション: レコードごとにコメントを記載したり、複数ユーザーで情報共有したりできるため、メールやチャットツールに散らばりがちな業務連絡を集約できます。
サイボウズが提供するクラウドサービスとしての位置付け
kintoneは、サイボウズが提供するビジネス向けクラウドサービス群(Cybozu Office, Garoon, メールワイズなど)の中核をなす製品です。これらの製品と連携することで、グループウェア機能やメール共有機能などを組み合わせ、より広範な業務課題に対応できます。cybozu.comという共通基盤上で動作するため、アカウント管理やセキュリティ設定を一元的に行える点もメリットです。
現場業務でkintoneが支持される理由
kintoneが特に現場の業務改善で支持される理由は、その手軽さと柔軟性にあります。
- 専門知識不要: システム開発の経験がない現場担当者でも、自分たちの業務に合ったアプリを作成・修正できます。
- スピーディーな改善: 業務の状況変化に合わせて、アプリを素早く改修し、運用しながら改善していくアジャイルな業務改善が可能です。
- 情報の一元化と共有: Excelや紙で管理されていた情報をkintoneに集約することで、チーム内での情報共有がスムーズになり、属人化を防ぎます。複数ユーザーが同時にデータを参照・入力できます。
- 多様な業務への対応: 顧客管理、案件管理、日報管理、問い合わせ管理、タスク管理、契約管理、販売管理など、部署や業種を問わず、幅広い業務に活用できます。

kintoneのログイン画面とログイン方法
ログイン画面の基本構成と使い方
kintoneへのアクセスは、Webブラウザを通じて行います。ログイン画面には通常、以下の要素が表示されます。
- サブドメイン: 契約時に設定した、組織固有のURLの一部(例: yourcompany.cybozu.com)。
- ログイン名: 各ユーザーに割り当てられたID。
- パスワード: ユーザーが設定したパスワード。
- ログインボタン: IDとパスワードを入力後、クリックしてログインします。
- パスワードを忘れた場合: パスワード再設定手続きへのリンク。
- セキュアアクセス: 必要に応じて設定される、クライアント証明書による認証などの情報。
管理者によってSAML認証などのシングルサインオン(SSO)が設定されている場合は、ログイン画面の表示やログイン方法が異なる場合があります。
kintoneのログイン方法と手順
基本的なログイン手順は以下の通りです。
- Webブラウザを開き、指定されたkintoneのURL(https://サブドメイン.cybozu.com)にアクセスします。
- ログイン画面で、自分のログイン名とパスワードを入力します。
- [ログイン] ボタンをクリックします。
管理者によって2要素認証が設定されている場合は、パスワード入力後に、認証アプリ(例: Google Authenticator)に表示されるコードや、メールで送信される確認コードの入力が必要になります。
ログインできない場合の対処法
ログインできない場合は、以下の点を確認してください。
- URLの確認: 正しいサブドメインにアクセスしているか確認します。
- ログイン名・パスワードの確認: 大文字・小文字、半角・全角などが間違っていないか確認します。複数回間違えるとアカウントがロックされる場合があります。
- パスワードリセット: パスワードを忘れた場合は、「パスワードを忘れた場合」のリンクから再設定手続きを行います。登録しているメールアドレスが必要です。
- アカウントロック: アカウントがロックされた場合は、管理者に連絡して解除を依頼します。
- セキュアアクセス/SAML認証: これらの設定がある場合は、証明書の有効期限切れや設定の不具合がないか管理者に確認します。
- ブラウザの問題: キャッシュクリアや別のブラウザでのアクセスを試します。
- サイボウズ側の障害: まれにサイボウズ側で障害が発生している可能性もあります。サイボウズの障害情報ページなどを確認します。
kintoneアプリの基本機能とできること
kintoneアプリでできること徹底解説
kintoneアプリは、業務に合わせて様々な機能を組み合わせることで、多岐にわたる業務課題を解決できます。
- データ管理・蓄積: 顧客リスト、商品マスタ、案件情報、問い合わせ履歴など、あらゆるデータを一元管理できます。Excelからのデータ移行も容易です。
- 業務プロセスの可視化・自動化: 申請・承認フロー(稟議、経費精算など)を設定し、進捗状況をリアルタイムで把握できます。条件に応じて通知を自動送信することも可能です。
- 情報共有・コミュニケーション: アプリ内のデータ(レコード)にコメントを付けて議論したり、関連情報を紐づけたりすることで、チーム内の情報共有を円滑にします。
- データ集計・分析: 登録されたデータを元に、リアルタイムで集計したり、グラフ(棒、円、折れ線など)を作成したりして、業務状況を可視化できます。レポート作成の手間を削減します。
- タスク管理・進捗管理: ToDoリストやプロジェクトの進捗管理にも活用できます。担当者や期限を設定し、通知機能でリマインドすることも可能です。
- ファイル共有・管理: 契約書や提案資料などのファイルをレコードに紐づけて管理できます。バージョン管理はできませんが、最新ファイルの共有が容易になります。
業務に役立つ機能とその活用方法
kintoneには、業務改善に直結する便利な機能が多く用意されています。
- フィールドの種類:
- 文字列: テキスト情報(氏名、会社名など)を入力。
- 数値: 金額や数量などを入力。自動計算にも利用。
- 計算: 他の数値フィールドを使って自動計算(合計、平均、四則演算など)。
- 日付/日時/時間: 期限や登録日時などを管理。カレンダー表示にも活用。
- ドロップダウン/ラジオボタン/チェックボックス: 選択肢の中から選択させる形式。入力ミスを防ぎ、データの標準化に貢献。
- ユーザー選択/組織選択/グループ選択: 担当者や部門などを選択。アクセス権設定や通知先指定に活用。
- 添付ファイル: Word、Excel、PDFなどのファイルを添付。
- ルックアップ: 他のアプリから関連するデータを取得・表示(例: 顧客管理アプリから会社名を取得)。データの二重入力を防ぐ。
- 関連レコード一覧: あるレコードに関連する他のアプリのレコードを一覧表示(例: 顧客レコードに、その顧客に関連する案件レコード一覧を表示)。
- プロセス管理機能: 申請から承認までの流れを設定。条件分岐や担当者の自動設定も可能。承認待ちなどの状況が把握しやすくなる。
- 通知機能: レコードの登録・更新、コメントの書き込み、プロセスの進行、リマインダーなどを、関係者に通知(kintone内通知、メール通知)。対応漏れを防ぐ。
- スペース機能: 特定のテーマやプロジェクトに関する情報共有の場。アプリやスレッド(掲示板)を配置できる。チームや部門ごとのコミュニケーション基盤として活用。
- ゲストスペース: 外部のユーザー(取引先など)を招待し、限定された情報を共有できる機能。
kintoneでできないこと・制限事項
kintoneは万能なツールではありません。以下のような制限事項や、不得意な分野もあります。
- 複雑な計算や分析: 高度な統計処理や、複数アプリにまたがる複雑なクロス集計などは標準機能では難しい場合があります。ExcelやBIツールとの連携が必要になることもあります。
- 本格的な文書管理: バージョン管理や高度な検索機能は搭載されていません。
- デザインの自由度: 画面レイアウトやデザインのカスタマイズには制限があります。
- 大規模トランザクション処理: 大量のデータを高速に処理するような基幹システムとしての利用には向きません。
- オフライン利用: 基本的にオンライン環境での利用が前提です(一部、モバイルアプリでのキャッシュ機能あり)。
- 標準機能を超える連携: APIやプラグインを使わない場合、外部システムとの連携には限りがあります。
これらの制限を理解した上で、kintoneの得意な領域で活用することが重要です。

kintoneアプリの作成方法を徹底解説
初心者向け!アプリの新規作成手順
kintoneアプリの作成方法は主に3つあります。
- はじめから作成:
- kintoneのポータル画面(トップページ)で [+] ボタンをクリックし、「アプリをはじめから作成」を選択。
- アプリ名、アイコン、アプリの説明を設定します。
- フォーム設定画面で、左側にあるフィールド一覧から必要なフィールドをドラッグ&ドロップで右側のエリアに配置します。
- 配置したフィールドの設定(フィールド名、必須項目かどうか、入力制限など)を行います。
- フォームの設計が完了したら、画面右上の [フォームを保存] をクリックし、次に [アプリを公開] をクリックします。これでアプリが利用可能になります。
- Excel/CSVファイルを読み込んで作成:
- 既存のExcelやCSVファイルのデータをもとに、アプリを自動作成できます。データ移行とアプリ作成を同時に行いたい場合に便利です。
- [+] ボタンから「Excel/CSVを読み込んで作成」を選択し、ファイルをアップロードします。
- kintoneがファイルの内容を解析し、自動でフィールドの種類を判別してフォームを作成します。必要に応じてフィールドの種類や設定を修正し、アプリを公開します。
- kintoneアプリストアから選んで作成:
- サイボウズやパートナー企業が用意した、様々な業務向けのサンプルアプリ(テンプレート)が多数登録されています。
- [+] ボタンから「アプリストアから選ぶ」を選択し、目的のアプリを探して追加します。
- 追加したアプリは、そのまま利用することも、自社の業務に合わせてカスタマイズすることも可能です。顧客管理、販売支援、人事管理など、多様な種類のアプリが用意されています。
初心者の方は、まず「kintoneアプリストア」で自社の業務に近いサンプルを探してみるか、「Excel/CSV読み込み」で手持ちのデータから作成してみるのがおすすめです。
フィールドや項目の追加と設計ノウハウ
効果的なアプリを作成するには、フォームの設計が重要です。
- フィールドの選択: 業務で管理したい情報を洗い出し、それぞれに適したフィールドの種類を選択します。
- フィールド名の命名: 誰が見ても分かりやすい、具体的な名称を付けます(例: 「日付」ではなく「受注日」)。
- 配置とグルーピング: 関連する項目を近くに配置したり、グループフィールドを使ってまとめたりすると、入力しやすくなります。入力する順番を考慮して配置することも重要です。
- 入力必須設定: 必ず入力してほしい項目は「必須項目にする」にチェックを入れます。データの抜け漏れを防ぎます。
- 初期値の設定: よく入力される値や、今日の日付などを初期値として設定しておくと、入力の手間が省けます。
- 入力値の制限: 数値の範囲や文字列の文字数制限、入力形式(メールアドレス形式など)を設定することで、入力ミスや不正なデータを防ぎます。
- ルックアップの活用: マスタ管理アプリ(顧客マスタ、商品マスタなど)を作成し、ルックアップ機能で関連データを取得するように設計すると、データの整合性を保ちやすくなります。
- スペースと説明: フィールド間にスペースを設けたり、ラベルフィールドで補足説明を記載したりすると、フォームが見やすくなります。
設計段階でチームメンバーや関係部門にレビューしてもらい、意見を取り入れることも有効です。
サンプル事例で学ぶアプリ作成
具体的なサンプル事例をいくつかご紹介します。
- 顧客管理アプリ:
- フィールド: 会社名(文字列)、部署名(文字列)、担当者名(文字列)、メールアドレス(メールアドレス)、電話番号(文字列)、住所(文字列)、最終接触日(日付)、担当ユーザー(ユーザー選択)、関連案件(関連レコード一覧)
- 活用: 顧客情報を一元管理し、営業担当者間の情報共有を促進。ルックアップで案件管理アプリと連携。
- 案件管理アプリ:
- フィールド: 案件名(文字列)、顧客名(ルックアップ – 顧客管理アプリから取得)、契約予定日(日付)、販売確度(ドロップダウン)、受注予定金額(数値)、担当者(ユーザー選択)、進捗状況(ラジオボタン)、商談履歴(テーブル)、ファイル添付(添付ファイル)
- 活用: 営業案件の進捗状況を可視化。プロセス管理機能で承認フローを設定。集計機能で売上予測を把握。
- 日報アプリ:
- フィールド: 報告日(日付 – 初期値: 今日)、報告者(ユーザー選択 – 初期値: ログインユーザー)、作業内容(文字列複数行)、所感(文字列複数行)、明日の予定(文字列複数行)、添付ファイル(添付ファイル)
- 活用: チームメンバーの作業内容を共有。コメント機能でフィードバックや指示を行う。登録された日報を集計して業務分析に活用。
- 問い合わせ管理アプリ:
- フィールド: 受付日時(日時 – 自動登録)、氏名(文字列)、メールアドレス(メールアドレス)、問い合わせ種別(ドロップダウン)、問い合わせ内容(文字列複数行)、対応状況(ドロップダウン – 未対応/対応中/完了)、担当者(ユーザー選択)、対応履歴(文字列複数行)
- 活用: 顧客からの問い合わせを一元管理し、対応漏れや二重対応を防止。担当者への通知や対応状況の可視化により、迅速な対応を支援。
これらのサンプルを参考に、自社の業務に合わせてフィールドを追加・修正することで、オリジナルの業務アプリを作成できます。

レコード・データの入力・管理方法
レコードの追加・編集・削除方法
作成したアプリへのデータ(レコード)の入力や管理は簡単です。
- レコードの追加:
- アプリを開き、画面右上にある [+] (レコードを追加する)ボタンをクリックします。
- フォームが表示されるので、各項目にデータを入力します。
- 入力が完了したら、画面左上の [保存] ボタンをクリックします。
- レコードの編集:
- 編集したいレコードの詳細画面を開きます。
- 画面右上にある [編集する] ボタン(鉛筆アイコン)をクリックします。
- フォームが編集モードになるので、必要な箇所を修正します。
- 修正が完了したら、画面左上の [保存] ボタンをクリックします。
- レコードの削除:
- 削除したいレコードの詳細画面を開きます。
- 画面右上にある […] (その他の操作)ボタンをクリックし、[レコードを削除する] を選択します。
- 確認メッセージが表示されるので、[削除する] をクリックします。
- 注意: 一度削除したレコードは元に戻せません(管理者による監査ログでの確認は可能)。アクセス権設定で、削除権限を制限することも重要です。
- 一括登録・更新: ExcelやCSVファイルを使って、複数のレコードをまとめて登録したり、既存レコードを更新したりすることも可能です。アプリの設定画面から行います。
入力必須項目の設定と管理
データの品質を保つためには、必須項目の設定が有効です。
- 設定方法: アプリのフォーム設定画面で、必須にしたいフィールドの設定を開き、「必須項目にする」にチェックを入れます。
- 動作: 必須項目が入力されていない場合、レコードの保存時にエラーメッセージが表示され、保存できません。
- 管理上の注意点:
- どの項目を必須にするかは、業務の運用に合わせて慎重に検討します。あまり多く設定しすぎると、入力の負担が増大します。
- 運用開始後に必須項目を変更・追加する場合、既存レコードにその項目のデータが入力されていない可能性があるため、データメンテナンスが必要になる場合があります。
複数ユーザーによる同時編集と対応
kintoneでは、複数のユーザーが同じアプリにアクセスし、レコードを閲覧・編集できます。
- 同時編集時の動作: 複数のユーザーが同時に同一レコードを編集しようとした場合、最初に保存したユーザーの操作が優先されます。あとから保存しようとしたユーザーには、次のエラーメッセージが表示され、編集内容を保存できません。エラーが表示された場合は、入力途中の内容をコピーした上で、レコードを再読み込みするか、レコードを開き直して再度編集してください。
- [キャンセル]ボタンをクリックしたり、他の画面に移動したりすると、入力途中の編集内容は削除されます。
- なお、レコードを編集する際、同一レコードの編集画面を他のユーザーが開けないようにロックすることはできません。
- 対応・注意点:
- 排他制御: 標準機能では厳密な排他制御(編集中は他のユーザーが編集できないようにロックする機能)はありません。重要なデータを複数人で頻繁に更新するような業務では、運用ルール(編集前にコメントで宣言するなど)を設けたり、プラグインやカスタマイズによる排他制御の導入を検討したりすることがあります。
- コメント機能の活用: 編集前にコメント欄で他のユーザーに確認するなど、コミュニケーションを取りながら作業を進めることが推奨されます。
- レコードの変更履歴: レコードの詳細画面で、誰がいつどのフィールドを変更したかの履歴を確認できます。意図しない変更があった場合に、原因を追跡するのに役立ちます。
データ集計・グラフ・カレンダー機能活用術
集計・計算フィールドの活用
kintoneアプリに蓄積されたデータは、リアルタイムで集計・分析できます。
- 一覧画面での集計:
- 合計、平均、最大、最小、件数などを簡単に集計して表示できます。
- 絞り込みやソートと組み合わせることで、特定の条件に合致するデータのみを対象に集計できます。
- 集計機能(グラフ作成):
- アプリのレコード一覧画面右上にあるグラフアイコンをクリックし、「グラフを作成する」を選択します。
- グラフの種類(縦棒、横棒、円、折れ線、クロス集計表など)を選択します。
- 集計方法(合計、平均、最大、最小、件数)、グループ化する項目(大項目、中項目)、条件などを設定します。
- 設定を保存すると、いつでも最新のデータに基づいた集計結果やグラフを確認できます。売上推移、問い合わせ種別割合、担当者別案件数など、業務状況の把握に役立ちます。
- 計算フィールド:
- フォーム設定時に「計算」フィールドを配置することで、同じレコード内の他の数値フィールドの値を使って自動計算(例: 単価 * 数量 = 金額)ができます。入力の手間を省き、計算ミスを防ぎます。
カレンダーやグラフで業務状況を可視化
数値だけでなく、日付情報やステータス情報を視覚的に把握する機能も便利です。
- カレンダー表示:
- アプリに日付フィールドや日時フィールドがある場合、レコードをカレンダー形式で表示できます。
- カレンダーに表示する日付フィールド(開始日、終了日など)や、タイトルとして表示するフィールドを設定します。
- イベントのスケジュール管理、タスクの締め切り管理、契約更新日の管理などに活用できます。Googleカレンダーなど外部カレンダーとの連携もプラグインなどで可能です。
- グラフによる可視化:
- 前述の集計機能で作成したグラフは、業務の状況を一目で把握するのに非常に有効です。
- ダッシュボードとして、複数のグラフや集計結果をkintoneのポータル画面に配置することも可能です。チーム全体の状況を共有し、意思決定を支援します。
通知・メールによる進捗把握と報告
業務の進捗を把握し、関係者への報告を効率化するために通知機能を活用します。
- アプリの通知設定:
- アプリの設定画面で、「通知」を設定できます。
- レコードが追加された時、編集された時、コメントが書き込まれた時、プロセス管理でステータスが変更された時(例: 申請が承認された時)など、様々な条件で通知を送信できます。
- 通知先として、特定のユーザー、組織、グループ、フォーム内のユーザー選択フィールドで選択されたユーザーなどを指定できます。
- リマインダー通知:
- 日付フィールドや日時フィールドを条件として、指定した日時に通知を送信できます(例: 契約終了日の1ヶ月前に担当者へ通知)。タスクの締め切りや期限の管理に役立ちます。
- メール通知:
- kintone内の通知だけでなく、登録されたメールアドレス宛に通知を送信することも可能です。kintoneを頻繁に開かないユーザーにも情報を届けられます。
- 活用例:
- 営業担当者が案件を登録したら、上司に通知が飛ぶ。
- 問い合わせが登録されたら、サポート部門のメンバー全員に通知が飛ぶ。
- 承認依頼が来たら、承認者にメールで通知が届く。
- タスクの締め切り前日に、担当者にリマインド通知が飛ぶ。
これにより、報告のための作業時間を削減し、情報の伝達漏れを防ぎ、業務のスピードアップに繋がります。
kintoneの連携・外部システム対応
kintoneは単体でも便利ですが、外部のシステムやサービスと連携することで、さらに活用の幅が広がります。
Excel・ファイル取込と連携方法
多くの企業で利用されているExcelとの連携は、kintone導入・運用において重要なポイントです。
- Excel/CSVファイルのインポート:
- 既存のExcelやCSVファイルのデータをkintoneアプリに一括で取り込むことができます。アプリの作成時だけでなく、運用中のデータ追加にも利用できます。
- アプリの設定画面の「レコードの一括登録・更新」から行います。フィールドのマッピング(Excelの列とkintoneのフィールドを対応付ける)が必要です。
- Excel/CSVファイルのエクスポート:
- kintoneアプリに登録されているデータをExcelやCSVファイルとして書き出すことができます。
- レコード一覧画面の (その他の操作)[•••]ボタンから [ファイルに書き出す] を選択します。
- Excelでさらに詳細な分析を行ったり、他のシステムにデータを渡したりする場合に活用します。
- 連携ツール/プラグイン:
- kintoneとExcel間のデータ同期をよりスムーズに行うための連携ツールやプラグインも提供されています。定期的なデータ連携や、より複雑なデータ加工が必要な場合に検討します。
プラグインやAPIでの拡張
kintoneの標準機能だけでは実現できないことは、プラグインやAPIを活用して拡張できます。
- プラグイン:
- kintoneに特定の機能を追加するためのプログラムです。サイボウズや多くのパートナー企業が様々なプラグインを開発・販売しています。
- 例: 帳票出力プラグイン(見積書や請求書などをアプリのデータから作成)、カレンダー連携強化プラグイン、外部データベース連携プラグイン、入力支援プラグインなど。
- アプリの設定画面からプラグインを追加し、設定を行うだけで利用できます。プログラミングの知識は不要です。
- API (Application Programming Interface):
- 外部のシステムやプログラムからkintoneのデータを操作するためのインターフェースです。REST APIが提供されています。
- APIを活用することで、自社の基幹システムとkintone間でデータを自動同期させたり、kintoneのデータをトリガーにして外部システムの処理を動かしたりといった、高度な連携が実現できます。
- APIの利用には、プログラミング(Javascriptなど)のスキルが必要になります。開発パートナーへの依頼も可能です。

他クラウドサービスとのスムーズな連携
近年利用が増えている様々なクラウドサービスとも連携が可能です。
- グループウェア連携: サイボウズ OfficeやGaroonと連携し、スケジュールや施設予約、ワークフローなどをkintoneアプリと結びつけることができます。
- ビジネスチャット連携: SlackやMicrosoft Teamsなどと連携し、kintoneの通知をチャットに送信したり、チャットからkintoneのレコードを操作したりできます。
- オンラインストレージ連携: Box、Dropbox、Google Driveなどと連携し、kintoneアプリからファイルを直接参照・管理できます。
- MA/SFA/CRMツール連携: Salesforce、HubSpotなどのマーケティング・営業支援ツールと連携し、顧客情報や商談情報を相互に同期させることができます。
- 会計ソフト連携: freeeやMFクラウド会計などと連携し、請求情報や経費精算データをスムーズに転送できます。
- iPaaS (Integration Platform as a Service): ZapierやIntegromat (Make) などのiPaaSを活用することで、プログラミングなしで複数のクラウドサービスとkintoneを連携させることも可能です。
これらの連携により、データの二重入力の手間を省き、業務プロセス全体の効率化を図ることができます。
セキュリティ・ユーザー管理・体制構築
kintoneを安心して利用するためには、セキュリティ対策と適切なユーザー管理、運用体制の構築が不可欠です。
セキュリティ機能と管理体制のポイント
kintoneはエンタープライズレベルのセキュリティ機能を備えています。
- 通信の暗号化: すべての通信はSSL/TLSによって暗号化されます。
- IPアドレス制限: 指定したIPアドレスからのみアクセスを許可するように設定できます。オフィス外からの不正アクセスを防ぎます。
- セキュアアクセス: クライアント証明書を利用した端末認証により、許可された端末以外からのアクセスをブロックできます。
- パスワードポリシー: パスワードの最低文字数、有効期間、履歴の制限などを設定できます。
- 2要素認証: ID/パスワードに加えて、認証アプリやメールによる確認コード入力を必須にすることで、なりすましログインを防止します。
- 監査ログ: いつ、誰が、どのような操作(ログイン、レコード閲覧・登録・編集・削除、アプリ作成・設定変更など)を行ったかのログが記録されます。不正操作の追跡や原因究明に役立ちます。
- データセンター: 堅牢なデータセンターで運用されており、データのバックアップも自動で行われます。
管理体制のポイントとしては、cybozu.com共通管理者と各kintoneアプリの管理者の役割分担を明確にし、セキュリティ設定や運用ルールを定期的にレビューすることが重要です。個人情報や機密情報を扱うアプリについては、特にアクセス権設定などを慎重に行う必要があります。
ユーザー・部門ごとの権限設定と対応
kintoneでは、ユーザーや組織(部門)、グループ単位で、きめ細かなアクセス権限を設定できます。
- アプリ単位のアクセス権:
- アプリごとに、ユーザー/組織/グループに対して、アプリの管理権限、レコードの閲覧・追加・編集・削除権限、ファイルの書き出し権限などを設定できます。
- レコード単位のアクセス権:
- 特定の条件(例: 作成者が自分自身、ステータスが「完了」など)に基づいて、レコードごとに閲覧・編集・削除権限を設定できます。これにより、「自分の担当する案件しか見られない」「承認済みのレコードは編集できない」といった制御が可能です。
- フィールド単位のアクセス権:
- フォーム内の特定のフィールド(項目)に対して、閲覧・編集権限を設定できます。個人情報や給与情報など、特定のユーザーにしか見せたくない情報がある場合に活用します。
これらの権限設定を適切に行うことで、情報の機密性を保ちつつ、必要なユーザーが必要な情報にアクセスできる環境を構築できます。組織変更や異動があった際には、速やかに権限設定を見直す体制も必要です。
申請・承認フローの設計事例
プロセス管理機能を活用して、申請・承認フローを設計する際の事例とポイントです。
- 設計手順:
- 業務プロセスの洗い出し: 誰が申請し、誰が承認(または差し戻し)し、どのような条件でプロセスが分岐するのかを明確にします。
- ステータスの定義: プロセスの各段階(例: 「申請前」「課長承認待ち」「部長承認待ち」「承認済み」「差し戻し」)を定義します。
- 作業者(アクション実行者)の設定: 各ステータスにおいて、次にアクション(申請、承認、差し戻しなど)を実行できるユーザーを設定します。申請者本人、特定の役職、フォーム内のユーザー選択フィールドで指定されたユーザーなどを設定できます。
- プロセスフローの設定: アプリの設定画面の「プロセス管理」で、ステータスと、ステータス間のアクション(ボタン名)、アクション実行後のステータスを設定していきます。条件分岐(例: 金額が〇〇円以上なら部長承認も必要)も設定可能です。
- 設計のポイント:
- シンプルに始める: 最初から複雑なフローを作らず、基本的な流れから始めて、運用しながら改善していくのがおすすめです。
- ステータスと作業者を明確に: 今、誰がボールを持っているのかが一目でわかるように設計します。
- 通知設定の活用: 承認依頼が来た時や、ステータスが変更された時に関係者へ自動通知するように設定し、対応漏れを防ぎます。
- 権限設定との連携: プロセスのステータスに応じて、レコードの編集権限を制御する(例: 承認後は編集不可にする)ことも重要です。
- 事例:
- 経費精算申請: 申請者が入力 → 上長が承認 → 経理担当者が確認・処理完了
- 稟議申請: 申請者が起案 → 関係部門がレビュー → 課長が承認 → 部長が承認
- 休暇申請: 申請者が申請 → 上長が承認 → 人事担当者が確認
プロセス管理を導入することで、申請・承認業務のスピードアップ、進捗状況の可視化、ペーパーレス化を実現できます。
kintoneの導入・無料版・試し環境について
無料版と有料版の違い・比較
kintoneには、本格導入前に機能を試せる無料のお試し(トライアル)期間と、本格利用のための有料版があります。
- 無料お試し(30日間トライアル):
- 期間: 30日間
- ユーザー数: 無制限
- 機能: 有料版のスタンダードコースとほぼ同等の機能(API利用、プラグイン利用、ゲストスペース利用などを含む)を無料で試せます。
- アプリ数/スペース数: 上限あり(通常利用には十分な数)
- ディスク容量: 上限あり
- 目的: kintoneの機能や操作感、自社の業務への適合性を評価するため。試しにアプリを作成してみるのに最適。
- 注意点: 30日間の期間終了後、契約しない場合は作成した環境やデータは削除されます。
- 有料版:
- コース: ライトコースとスタンダードコースの2種類があります。
- ライトコース: 基本的なアプリ作成・データ管理機能に限定。外部連携(API, プラグイン)、プロセス管理、ゲストスペースなどの機能は利用できません。ディスク容量もスタンダードコースより少ない。比較的シンプルな用途や、情報共有メインの場合向け。
- スタンダードコース: kintoneのすべての機能(API, プラグイン, プロセス管理, アクセス権の詳細設定など)が利用可能。拡張性が高く、本格的な業務改善やシステム構築に向いています。
- 料金: ユーザー数に応じた月額または年額契約。最低10ユーザーからの契約が必要です。(最新の料金は公式サイトでご確認ください)
- 契約期間: 月単位または年単位。
どちらのコースを選ぶべきか:
外部連携やワークフローが必要な場合、拡張性を重視する場合はスタンダードコースが推奨されます。まずは無料お試しでスタンダードコースの機能を評価し、必要な機能を見極めてから有料版のコースを選択するのが良いでしょう。
試し環境の作成と契約手続き
無料お試し環境の作成は、サイボウズの公式サイトから簡単に行えます。
- サイボウズのkintone製品ページにアクセスし、「無料お試し」などのボタンをクリックします。
- 申し込みフォームに、会社名、氏名、メールアドレス、電話番号、希望するサブドメイン名などの必要事項を記載して送信します。個人情報の取り扱いについて確認し、同意する必要があります。
- 申し込みが完了すると、登録したメールアドレス宛にログイン情報などが記載されたメールが届きます。
- メール内の情報に従って、kintoneにログインすれば、すぐにお試し環境の利用を開始できます。
- お試し期間終了後の契約手続き:
- お試し期間中または終了後に、管理画面(cybozu.com共通管理)から購入手続きに進むことができます。
- 契約するコース(ライト/スタンダード)、ユーザー数、契約期間(月額/年額)などを選択し、支払い情報を登録します。
- お試し期間中に作成した環境(アプリ、データ、設定など)は、有料契約に移行すればそのまま引き継いで利用できます。
導入前に必要な事前準備と評価ポイント
kintone導入を成功させるためには、事前の準備と評価が重要です。
- 課題の明確化: kintoneで解決したい業務上の課題(例: Excel管理の限界、情報共有の不備、申請業務の非効率)を具体的に特定します。
- 対象業務の選定: まずはスモールスタートできる対象業務を選びます。効果が出やすく、関係者の協力が得やすい業務から始めるのがおすすめです。
- 要件定義(簡易的でも): 対象業務で必要な機能、管理したいデータ項目、実現したいプロセスなどを洗い出します。
- 無料お試しの活用:
- 特定した課題や対象業務を解決するアプリを実際に作成してみます。
- 現場のユーザーにも試しに利用してもらい、操作感や業務への適合性を評価します。フィードバックを収集し、改善に繋げます。
- 必要な機能(プラグイン、API連携の要否など)を見極め、有料版のコース選定の参考にします。
- 費用対効果の検討: 導入にかかるコスト(ライセンス費用、必要であればプラグイン費用や開発費用)と、導入によって得られる効果(作業時間の削減、ミスの削減、情報共有の促進など)を比較検討します。
- 運用体制の検討: 誰がアプリを作成・管理するのか、ユーザーへの教育やサポートをどうするのか、運用ルールなどを事前に検討しておきます。社内に推進役となる担当者やチームを置くことが成功の鍵となります。
- パートナー支援の検討: 自社だけでの導入やアプリ作成が難しい場合は、サイボウズのオフィシャルパートナー(導入支援、アプリ開発、運用コンサルティングなどを提供)の活用も検討します。認定資格を持つパートナーもいます。
これらの準備と評価を丁寧に行うことで、kintone導入の失敗リスクを減らし、効果を最大化することができます。

おわりに
kintoneは、現場主導で業務改善を進めるための強力なツールです。ノーコードでアプリを作成できる手軽さ、柔軟なカスタマイズ性、豊富な連携機能を活用することで、日々の業務の悩みを解決し、生産性向上を実現できます。
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